高齢者の肺炎は命取り⁉死亡率や症状は?
高齢者が亡くなる原因として、最近急増しているのが「肺炎」です。
もともと肺炎で亡くなる高齢者は多かったのですが、ここ数年その人数がとても多くなりました。老人施設でも、利用者が軽い風邪を引いた後に肺炎を起こし、命にかかわるケースも少なくありません。
今回はこの高齢者と肺炎について、原因や危険性など詳しくお話ししましょう。
また、高齢者特有の肺炎ともいえる「誤嚥性肺炎」についても詳しくお話ししたいと思います。
目次
高齢者が肺炎になると危険?そもそも肺炎とは
肺炎というのは、細菌やウイルスなどの病原体が、気道から肺に入り、そこで炎症が起きる病気です。
肺の中で細菌などが増殖するので、発見や対応が遅いと、高齢者の場合には重症化しやすく命にかかわります。
肺炎と風邪の症状はよく似ていて、気づきにくいともいわれていますが、実際には炎症が起きている部分が違い、肺の中で炎症を起こす肺炎は、高齢者にとって本当に危険な病気であるといえます。
高齢者の肺炎の死亡率はどれくらい?
具体的に高齢者の肺炎による死亡がどれだけ多いのか、見ていきたいと思います。
厚生労働省のデータ(※)によると、65歳~69歳、70歳~74歳、75歳~79歳の死亡原因の4位が肺炎になっています。
また、80歳~84歳、85歳~89歳、90歳~94歳、95歳~99歳、100歳以上の各ランキングで肺炎は3位になっています。
また、肺炎で死亡された方の97%以上は、65歳以上の高齢者です。
高齢者にとって肺炎は「命にかかわる病気」といっても過言ではありません。
高齢者の肺炎はどんな症状?
肺炎の症状は、高齢者の場合、若い人に比べると気づきにくいのが難点です。
一般的な肺炎の症状は、咳や痰、発熱といった風邪によく似たものです。
それが高齢者の場合、高い熱が出にくく、咳や痰も目立たないために、つい見逃してしまう傾向があります。
痰が絡むという症状は、高齢になると出やすいですし、高齢者の肺炎は微熱のほうが多いのです。
しかも高齢者の場合、体力や免疫力といった部分で若い人に比べると低下していますから、何らかの病気にかかっても症状が出にくくなっています。
「何かおかしいと周りが気づいた段階で、深刻な状態になっているのが多い」これが高齢者の肺炎の特徴ともいえます。
高齢者の肺炎は、風邪とよく似た症状が長く続きやすいため、風邪が治りにくい場合には、肺炎を疑うことも必要です。
高齢者に多い誤嚥性肺炎
高齢者の肺炎では、ウイルスや細菌が原因となるものとは別に、「誤嚥性肺炎」があります。
実は、この誤嚥性肺炎が、高齢者の肺炎の中でかなりの割合を占めているのです。
では誤嚥性肺炎とは、どんな肺炎なのでしょうか。
「誤嚥」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、飲み物や食べ物がうまくのみこめずに、食道ではなく気道に入ってしまうことを言います。
私たちが何かを飲んだり食べたりした時に、むせてしまうことがありますよね。それがいわゆる誤嚥です。
若い人の場合、そのむせる力、つまり気道に異物が入ることを阻止する力が強いために、気道に入ってしまうことはあまりありません。
ですが、高齢者は筋力や体力が落ちているために、飲み込む力が弱く、むせても気道に入り込んでしまうことが多いのです。
高齢者は、自分の唾液でもむせてしまうことがありますから、食べ物や飲み物、唾液などに含まれている病原体がそのまま肺に入って肺炎を起こしてしまう可能性があります。
こうした誤嚥は、繰り返されることが多いので、気づかないうちに肺炎にかかっているケースもあるのです。
普段からむせやすい高齢者が「いつもより元気がない」「微熱が続いている」といった症状があれば、誤嚥性肺炎を疑うべきとも言えます。
高齢者の肺炎予防
では、高齢者が肺炎にかからないように予防するにはどうすればいいのでしょうか。
肺炎はウイルスなどが原因ですが、空気と一緒に吸い込む、手についているという場合が多いので、普段から手洗いやうがいを心がけるのが大切です。
外出する時にはマスクをつけるなど、自己防衛するようにしましょう。
また肺炎予防として、肺炎球菌の予防接種を受けるのも一つの方法です。こうした予防接種は、肺炎の感染を防ぐわけではありませんが、感染した場合に症状が軽くなるというメリットがあります。
誤嚥性肺炎の予防は「食事の際は姿勢を整えて、誤嚥をしないようにする」ということが一番です。飲み込みにくい、食べにくいという場合には、食べやすい食事の形態に変えることも重要です。
飲み物の場合には、とろみをつけるというのもおすすめです。とろみをつける専用の商品が市販されていますし、使いやすいですから、試してみるといいでしょう。
食事のバランスが崩れると、高齢者に限らず体力や抵抗力、免疫力が落ちてしまいますから、しっかり食事をとることも肺炎予防につながるといえます。
また高齢者の誤嚥性肺炎は、食事だけでなく、寝ている時に自分の唾液でむせてしまい、唾液が気道に入って起こるケースも多いです。仰向けの姿勢で寝るよりも、横を向いて寝ると、誤嚥を起こしにくくなります。
まとめ
高齢者にとって、肺炎はとても怖い病気です。
最初は軽い風邪を引いたつもりが、実は肺炎で、気が付いた時には症状が重くなってしまっていたということにならないよう、普段からの予防や状態の観察が大切です。
そして、誤嚥性肺炎については、繰り返し起こす傾向があります。
何となく元気がない、微熱が続いている、食事でむせていたなど、思い当たることがあれば、早めに医療機関へかかることも重要です。
早めの対応は、肺炎だけでなくどんな病気でも、回復を早める手段ですし、高齢者の場合には、自覚症状が出にくいですから、周りで気づいてあげるのが一番の予防かもしれません。